本建物は将来、歴史公園化を予定している縄文時代晩期の史跡山王囲遺跡と一体的に計画されたものであり、全体計画の理念である「過去の歴史を学ぶだけでなく、縄文文化を基盤とした新たな地域文化の創出」を踏まえ、以下の3点を設計の目的としました。
町内外の人々が活発な活動や交流を繰り広げる地域文化創出の舞台として、行けば必ず誰かが居て、何か面白い事があるというような、人の動きや気配が感じられる「にぎわい」のある空間をつくる。
また、家族で休日を過ごす、子供達が学校帰りに立ち寄るなど、日常的な利用を想定し居間や書斎のような家庭的な雰囲気の感じられる「くつろぎ」のある空間をつくり、作業の合間の息抜きや資料の閲覧などの静かな活動にも配慮する。
本建物は大きく研究収蔵、情報展示、体験学習の3つの機能を有している。各機能は相互に関連しており、さらに活動を通して影響し合うことが望ましいと考えられる。
従がって、それぞれの活動拠点のほかに共有の空間をつくり、さらに、屋外体験広場や史跡との関わりから、屋内と屋外の空間を連続させるよう、テラス等の半屋外空間を積極的に配置する。
このように、機能の適度な融合と分節化に配慮した空間を構成することによって、様々な活動に柔軟に対応できるようにする。
現代の一迫町(現栗原市)のくらしの中での縄文文化の継承に考慮し、自然環境だけでなく歴史環境との調和に配慮する。例えば縄文時代の生活を意識した空間構成や自然素材の採用など、現代的な建築デザインのなかにも歴史的な感覚と精神を積極的に取り入れ、歴史の継承をめざす。
隣接する史跡との係わりにも配慮し、現代人の視点から歴史を見つめるにふさわしい場所として計画、設計しました。